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湿地の保全 壱町田湿地にて<2>


[2010-05-27 11:45:48]

先日、希少な植物や昆虫が生息する壱町田湿地(愛知県知多郡武豊町)を紹介した。前回は食虫植物の話をしたが、なぜ湿地に食虫植物が生息するのか、不思議に思った方もいらっしゃるだろう。


湿地の保全活動をしている「壱町田湿地を守る会」の方などによると、湿地は基本的に貧栄養状態であるため(壱町田湿地の場合、養分の少ない砂礫層を通った弱酸性の地下水が湧出する貧栄養湿地)、植物は根から吸収する栄養だけでは生きていけない。そのため、虫を捕えて栄養をとる形に進化してきたという。貧栄養だから他の植物は生息できないのだが、富栄養になると、ほかの植物が生息できるようになり、食虫植物は生存競争に負けてしまう。微妙なバランスで湿地の生態系が保たれている。


ところで、日本一小さいトンボ・ハッチョウトンボをご存知だろうか。湿地や休耕田にすみ、オスは鮮やかな赤色、メスは黄と黒の縞模様を示すきれいなトンボだが、近年の開発や環境汚染で数が激減。天然記念物に指定し、保護活動をしている地域もある。壱町田湿地の過去の写真には、このハッチョウトンボを食虫植物のシロバナナガバノイシモチソウが捕えた様子が写っている。
守る会の方はこう言っていた。「どんな環境にも、太陽や土を栄養にして育つ植物があって、その植物を栄養にする昆虫などの動物がいて、それらを食べる鳥などの動物がいて、それらを食べるもっと大きな動物がいる、そういう食物連鎖がある。このどれかがなくなると、いずれ全体に影響が出る。保全というのは、その場所をある特定の植物館や昆虫館にするのではなく、命の循環がきちんとなっている場所にすること、その視点が重要ではないか」。
ある生物を守ろうとしたら、その生物を中心にした生態系すべて、その環境自体を守る努力をしなければならない。保全の奥義を教わった気がする。


植物、動物、微生物が、光、水、土を通して、互いに生かし生かされ合っている湿地。その大切さが叫ばれて久しいが、繊細なバランスで保たれている生態系を守るのはたやすいことではない。壱町田湿地においても、周辺の農地で使われる肥料が地下水に染み込み、長い年月がたてば、湿地に供給される地下水の成分も変わってくるという。壱町田湿地のハッチョウトンボも3年ほど前から見られなくなってしまったそうだ。


今年は国連が定めた国際生物多様性年。生物多様性とは、①生態系の多様性 ②種の多様性 ③遺伝子の多様性と定義されている。難しい言葉が並び、生物多様性を保全しようと言われても、いまひとつピンとこない、遠いところで専門家たちが議論している話と思う方もいるかもしれない。
しかし、私たち人間も「命の循環」の中にいる。まずは、近くの河川や森林、田んぼなどで自然観察会などが開かれるときは、積極的に参加しよう。今まで知らなかった生物とその魅力、その場所の変化や現状を知って、身近な問題として考えることにつなげたい。


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ハッチョウトンボを捕えたシロバナナガバノイシモチソウ 『壱町田湿地植物群落 調査報告書』より


(窪田和恵)

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