気温差が必須な特殊なワイン
朝晩の冷え込みがぐっと厳しくなり、日中との気温差が大きかったりするこの時季。上着を1枚増やしたり脱いだり……と温度調節がけっこう難しい。このような一日における気温差は、体調をくずす原因にもなりやすく、なかなか厄介なものだ。
ところが、このような”一日における気温差”がとても大切な意味を持つ場合もある。たとえば紅葉だ。気温差が大きければ大きいほど、葉は鮮やかに色づく。
そして、もうひとつ、ある特殊なワインの出来である。先日、フランス ボルドー地方のソーテルヌ地区を訪れた。ここは「貴腐ワイン」が有名なところ。貴腐ワインとは、貴腐菌というカビの働きでブドウの水分が蒸発し、糖分が濃縮されたワインのこと。とろりと甘い濃厚な白ワインである。
このワインを造るためには、ある気象条件が欠かせない。それは、貴腐菌が繁殖しやすいように湿気があること、それに加え、ブドウがしっかり成熟するためにカラッと晴れて暖かい陽射しが差し込むことだ。
その点、このソーテルヌ地区はうってつけ。水温の異なる2つの河に挟まれているため、午前中は霧が発生しやすい。その一方、午後は南仏らしい暖かな太陽が顔を出すことが多い。秋の収穫時には、朝は霧の効果で高多湿&低温(約16℃)、日中は陽射しの効果で低湿度&高温(約30℃)。まさに、理想の環境なのである。一日の気温差と湿度差から恩恵を受けるこのワイン、ソーテルヌ地区ならではの稀少品というのも納得できるだろう。
また、このワインはブドウの収穫の機会を見計らうのが難しいのも特徴である。貴腐菌の効果をじっくり得るために、一般的なブドウよりも収穫の時期を遅らせるのが基本。ところが、収穫を先延ばしにするあまり、雨に打たれてしまえば、たちまちブドウは使いものにならなくなってしまうという。
これほどまで天候の影響を受けるのだから、さぞかし入念に天気情報を仕入れているのだろうと思い、シャトーの人に尋ねてみた。ところが意外にも「インターネットでちょこっと調べたり、醸造長が地元の人に聞きまわる程度です」とのこと。専属のお天気のプロもいないと言うから驚きだ。
ちなみに、今年の出来は「まあまあいいですよ!」 ……自信に満ちた言葉がとても印象深かった。
(大貫未記)





