海岸工学委員会
先日徳島阿南市で開催された土木学会「海岸工学委員会」に出席してきた。これは、日本国内における各大学や研究機関で研究されている波浪や高潮、津波、また海岸における人工物等についての研究論文発表会である。
この中で同時にいろいろな施設の見学ツアーがあり、それに参加してきたので、そのときの様子についてご報告する。
今回参加したのは、津波における被害とその対策として建設された防波堤についての見学ツアーだ。
まず津波の被害についてだが、ご存知の方もいると思うが、昭和21年に紀伊半島沖で起きたマグニチュード8.0の地震(南海地震)に伴い、中部地方から九州地方までの広い範囲にわたって膨大な被害を出したのだが、その際に起きた津波で、特に徳島県は大きな被害を受け、その中でも浅川港周辺では、死者85名、家屋の全壊161戸、流失185戸もの被害を受けていた。この理由としては、まずは地形的なもので、海から漁港にかけてV字型の入り江になっていて、典型的な高潮や津波による被害を受けやすい場所であると言うことと、もうひとつは、地震発生後10数分で津波が押し寄せ、さらに満潮時と重なったことが挙げられる。また、この浅川港では、過去に6回もの津波による被害も受けていた。
現地にはそのときの被害の状況を後世へ残すべく、約4mもの津波がきたということを証明する記念碑がところどころに建てられており、また近くの神社にはその津波によって命を落とされた方々の慰霊碑、また人家の壁には当時の津波が来たことを証明する跡を町で管理している。また、山側には避難所がいくつもあり、町全体が過去の悲しい出来事を教訓に津波から守ろうという意思が強くうかがえる場所となっている。
また、もう一つ目を見張るものは、防波堤である。
この防波堤は、外海とV字型になっている入り江とを切断するがごとく作られていて、しかもなんと防波堤が3重にもなっている。ただし、その光景はなんとも言えない悲しい光景にも見える。それは、遠くからでも海底が見えるくらい透き通るような青い海が広がっているにもかかわらず、その前には3重になった防波堤が立ちはだかっており、自然と人工物のアンバランスさが浮き彫りとなっている。また防波堤と防波堤との間には、河口や砂浜、またその防波堤の外側にも綺麗な砂浜が長く続いている。
過去何回も繰り返されている津波による被害があるので、何ともいえないが、これらの防波堤を見て、心配されるのが海流や海洋生物への影響だ。
一番外側の防波堤は今年の夏にまだできたばかりなので、そのあたりについての詳しい調査はこれからだということだが、できれば、日本の海岸で多く起きている砂の侵食、またそれによる海洋生物や、めぐりめぐって人間の生活への影響が起きている現在、同じようなことがここでも起きないことを願っている。
今回の学会では、今まで自然の流れを無視して建設されてきた海岸の人工物について、環境への問題として疑問視されている発表もされていた。これはとても意味の深いもので、今まで進んで行なってきたこうした人工物への問題意識が高まっている証拠でもあるからだ。
今後、自然との共存、またよりより人間の生活を行なっていくにはどうしたら良いのかについて、こうした専門家や研究者達により、もっともっと多く研究・開発が進み、日本はもちろん、地球全体で環境問題等について取り組んでいければと思っている。
(小川和幸)





