腹巻きの役割は毛虫のベッド!?

マツの幹に、わらでできた腹巻きのようなものが巻きつけられているのを見かける季節になった。これは、「こも巻き」と呼ばれていて冬の風物詩でもある。このこも巻きの役割、一言で言ってしまうと、なんと毛虫のベッドなのだ。
マツの葉が、多数の大型毛虫に食べられている光景を見たことはないだろうか。この毛虫は、その名も「マツカレハの幼虫」。行列を作って歩くなど、おもしろい習性がいくつかあり、ファーブル昆虫記でも詳しく描かれている。
マツカレハは、夏の終わりの頃にマツ類の葉や枝に卵を産みつける。まもなく孵化した幼虫が針葉を食べて成長。秋が深まると幹から降りてきて、落ち葉の下などで冬眠に入る。そして、春の訪れとともに再び木に登り、葉を食べるのを再開するのだ。春には幼虫もかなり大きく成長してくるので(7~8センチくらい)、ものすごい勢いでマツの針葉は食害されてしまう。
このようなマツカレハの習性を利用したトラップがこも巻きなのだ。落ち葉に潜って冬眠しようと葉っぱから降りてきた毛虫が、落ち葉と勘違いしてこも巻きの中にもぐりこんで冬眠をする。そして、春になる前にこも巻きごと、毛虫を除去してしまうというわけである。
こも巻きは、農薬を使わない、環境にやさしい害虫対策として各地で行われている。だが、新たな問題も浮上してきている。実は、こも巻きの中に入っているのは、松を食い荒らす虫ばかりではない。こも巻きの中に虫が集まることを知ってか、その虫を狙ってクモやムカデもたくさん集まるそうである。マツにとって、クモは害虫から守ってくれるありがたい存在。やはり、どんなところにも「招かざる客」は紛れ込んでしまうものなのだろう。
なお、マツカレハの幼虫は毒針毛を持つので直接手で触れないように注意しよう。毒のある毛虫というのは意外に少なく、日本に5000種類以上いると言われる毛虫の中でもたった15種類ほどしか存在しない。
(金子 大輔)





